
《富士夕景》2025年 水彩/紙 33.3×53.0cm(M10号)
「第10回記念 サロン・ド・アール・ジャポネ2025」グランプリ
フランスのパリ16区に位置するリンダ・ファレル・ギャルリーを舞台に、2025年4月23日から5月12日の日程で「第10回記念 サロン・ド・アール・ジャポネ2025」が開催された。2019年に始まったこの展覧会は、芸術の都パリで日本美術を観ることができる場として親しまれ、この度記念すべき第10回目を迎えた。日本から76名のアーティストが参加し、多数の出展作から見事グランプリに選ばれたのは、髙戸章の水彩画『富士夕景』。
新生美術会会員であり、多数の受賞歴を持つ彼に、作品制作や今後の活動についてインタビューをおこなった。
自然の中で感性を培った幼少期

《蝉しぐれ》 水彩/紙 50.0×72.7cm(M20号)
2015年 第68回創造展小品部門 奨励賞
──この度は、グランプリの受賞おめでとうございます。受賞作は童心を呼び覚ますような鮮やかな色遣いが特徴的ですが、どのような幼少期を過ごしたのでしょうか?
小学1年から中学1年までの7年間を、兵庫県宝塚市で過ごしました。その間は、あまり勉強もせず一人で野山を駆け巡って、自然、特に昆虫に触れ合っていたので、好きな絵にもそういった体験を活かすことができたように思います。自然と触れ合ううちに、それを絵に描いてみたいと思い、間近で見た虫や草花、鳥や動物達を、クレヨンや水彩で描きました。
──取材する際は、現地でスケッチをしたり写真を撮ったりするのでしょうか?
絵の題材は現地に行って写真を撮るか、絵のテーマにふさわしい、今までに集めておいた画像を探して選んだものを、組み合わせて絵に仕上げています。

《秋穫》 水彩/紙 27.3×41.0cm(P6号)
──数ある画材の中から、なぜ自身の表現方法に水彩を選んだのですか?
高校、大学の頃は油彩画も描きましたが、絵具やキャンバス等の画材が高額であることや、持ち運ぶ際にかさ張ること、乾燥に時間がかかるといった理由で、子どもの頃から親しんだ手頃な画法である水彩に絞りました。水彩は色が鮮やかでいろいろな表現、例えば油彩やアクリル、日本画のような表現もできる、とても描きやすい画材であることが魅力です。
──身近な画法だからこそ、研究次第でさまざまな表現が可能なのかもしれませんね。一部に色鉛筆も併用されているとのことですが、それはなぜでしょうか?
使用している色鉛筆は一般的な油性色鉛筆ではなく、水彩色鉛筆ですので、描いた後に水を含ませた筆でなぞれば水彩画と同じような仕上がりになります。そのため、細かい部分の描き込みやグラデーションなどの表現がしやすく、細密画に効果的だと思って採用しています。

《いい子だね》 水彩/紙 15.8×22.7cm(SMサイズ)
2022年 第32回全国サムホール公募展 優秀賞
──確かに、細やかな描き込みが作品に生命力を与えていますね。ご自身の作品の特徴はなんでしょうか?
人物や動物、自然風景などを対象に、目で見たありのままを細密に表現することで、油彩画や日本画に匹敵するような水彩画となっていることだと思います。
──これまでに多くの作品を手掛けていますが、どのような想いが制作の原動力になっていますか?
絵を観た人々に感動してもらいたいという想いと、自分の技量でどこまで完璧に描きこなせるのかを試したいという気持ちがあります。

《春爛漫》 水彩/紙 45.5×65.2cm(M15号)
──なるほど。作品を観る人のことを想いながら制作しているのですね。では、その作品に通底するテーマを聞かせてください。
ほっと心が和むような絵にしたいと考えています。身近な人々や動物、美しい自然風景等を描いた自分の作品を通して、心が穏やかになり、感動してもらえることが私の一番の喜びです。
二度目の出展で見事グランプリを受賞

《夕焼けに何想う》2021年 水彩/紙 27.3×41.0cm(P6号)
「第6回 サロン・ド・アールジャポネ2023」第2会期最優秀賞
──2023年3月に開催された「第6回サロン・ド・アール・ジャポネ2023」において、『夕焼けに何想う』で第2会期最優秀賞を受賞し、二度目の出展となる今回は、全会期を通してのグランプリに選ばれました。海外で評価を受けたことについてどのように思いますか?
由緒ある「サロン・ド・アール・ジャポネ」展で評価されたことで、今後海外でも活躍の場が拡がり、私の作品のマーケットも拡がるのではないかと期待しています。

髙戸のポートフォリオを見るアラン・バザール(フランス芸術家協会絵画部門代表)
──今回のグランプリ受賞作『富士夕景』は、どのような意図で制作しましたか?
日本らしさあふれる絵を描きたいという気持ちで、日本の象徴である富士山と、それを眺める着物姿の日本女性という組み合わせにしました。
──その気持ちがフランスの鑑賞者に通じた結果、この受賞につながったのかもしれませんね。近々、作品の発表を予定されている展覧会がありましたら教えてください。
毎年、2月と7月に開催されている「全国サムホール公募展」、6月の「新美展」、大学OBの美術展で私が幹事を務めている5月、12月開催の「彩寿会展」、8月の「全国日曜画家コンクール受賞者発表展」、11月の「近代日本美術協会展」等です。

《ママの背中》 水彩/紙 15.8×22.7cm(SMサイズ)
2023年 第33回全国サムホール公募展優秀賞
──これからも精力的に出展し続けられるのですね。展覧会以外では、どのようなことに挑戦したいですか?
展覧会での受賞等を重ねることによってある程度の名声を得た上で、肖像画やペット画などの受注制作をおこなうほか、水彩画教室の講師等を務めたいと考えています。
自身の作品と真摯に向き合い、技術向上のための努力を惜しまない髙戸章。意欲的に作品を発表し続ける彼の、あくなき挑戦にぜひ注目してほしい。
「第10回 サロン・ド・アール・ジャポネ 2025」についてはこちら

グランプリに決定した髙戸の『富士夕景』とギャラリー・オーナーのアヌッシュ・マスク
髙戸 章 Sho Takado
1947年 愛媛県生まれ
2016年、2018年、2020年、2023年にギャラリー国立(東京)で個展開催
新生美術会会員
受賞歴
新美展:2013~2024年新人賞、優秀賞、新美準大賞他
近代日本美術協会展:2013年、2015年、2018年、2020年優秀賞、金賞受賞
創造展:2013年大賞、2014年、2022年奨励賞受賞
全国サムホール公募展:2014~2024年優秀賞他受賞
全国日曜画家コンクール:2023年銀賞、2024年金賞受賞
サロン・ド・アール・ジャポネ:2023年第2会期最優秀賞、2025年グランプリ受賞
その他受賞多数