聞き手・文/REIJINSHA GALLERYスタッフ
ぷっくりと立体的な質感とやわらかな色彩で描かれる、スイーツや春の花たち。行き交う人々が「可愛い」と囁き合いながら眺めていくのが印象的だ。この作品を描いた日本画家・藤村栞は、作品で何を表現し、どこへ向かおうとしているのか。
REIJINSHA GALLERYで4月に開催された企画展『FOOD -おいしいを創る-』。「食べ物」をテーマにしたこのグループ展に出展した彼女に、同ギャラリーのスタッフが話を聞いた。
◆日本画との出会い

《春花にフルーツタルト》2026年 岩絵具、具絵具、典具帖紙/高知麻紙、パネル 27.3×22.0cm
──どのようなきっかけでアートの道に進まれたのでしょうか?
幼少期から絵を描くことが好きで、自分から通いたいと言った習い事は絵画教室だけでした。その絵画教室へは幼稚園の年中さんから中学まで通い、その後、違う分野も見てみなさいと言われて普通科の高校へ進んでも、美術への関心は変わりませんでした。
最初は絵の具やクレヨン、筆、色鉛筆など画材や色そのものが好きだったからだと思いますが、一番の理由は人に喜んで貰えたから、役に立つことができたから、かもしれません。はじめは親、その後は友達、先生など、人に喜んで貰えるというその経験は、小さい頃から今まで絵を描き続け、志すことができた一番の理由であり、私らしさに繋がっています。
──大学で日本画を専攻された理由をお教えください。
最初のきっかけは、美大への進学を考え始めた高校1年生あたりだと思います。美術予備校の体験会に参加し、牛骨、枕木、りんごのデッサンをすることになりました。その絵を隣に置いて予備校講師の方と面談をしたのですが、枕木のささくれ部分や牛骨のひび割れ部分をちみちみ描いていたその絵を見て「藤村さんは日本画が向いてるよ!」と言われて。恥ずかしながら当時は日本画が何かもよく分かっていなかったのですが、先生も勧めてくれたし、次の春季講習会は日本画コースにしてみよう!とよく分からないまま飛び込みました。
受験絵画が自分にとってどの専攻よりも分かりやすかったこと、その後幼少期に通っていた絵画教室の先生にも日本画を勧められたこともあり、徐々に興味が深まっていきました。それからは自分で日本画を調べたり、卒業制作展や藝祭をみたりする中で「描きたいものに近い」と感じ、少しずつ目指したい気持ちを整えていった感じです。

予備校時代の作品
──日本画のどのようなところに魅力を感じておられますか?
岩絵具の凹凸や粒子感、キラキラとしているところはもちろんですが、一番は、見る人に素直に、やさしく伝わるところです。
──影響を受けたアーティストはいますか?
幼少期通っていた絵画教室の先生からの影響が一番大きいと思います。自分の絵に自信を持てたことや、続けられたことにも繋がっています。
また、特定の作家に限定せず、いろいろな作品を見るようにしています。できるだけ多くのものを少しずつ吸収したい気持ちがあります。
◆ “好き”を描く

《みつかる》2023年 岩絵具/和紙、パネル 50.0×98.0cm
──藤村さんは食べ物、特にスイーツをよく描かれていますが、なぜなのでしょうか?
単純に「食べることが好き」が一番の理由です。好きなものを描いていると絵にも明るい気持ちが移る気がしています。
中でもスイーツを選んでいるのは見た目の華やかさ、可愛さももちろんありますが、お祝い事やちょっとしたご褒美など、ポジティブな場面で登場することが多いからです。作品を見た時に想像するイメージも、できるだけ明るいものになればいいなと思っています。
──藤村さんの作品においては、花も象徴的なモチーフです。モチーフとする花の選択や他のモチーフとの組み合わせは、どのように決められるのでしょうか?
色の組み合わせ、他のモチーフとの大小関係、花言葉からの連想などさまざまです。眠っている猫を描いた時、「美人の眠り」という花言葉を持つ花海棠を組み合わせて描いたりもしました。

《花海棠》2024年 岩絵具/和紙、パネル 33.3×33.3cm
──作品を通じてどのようなことを表現したいですか?
人の内面にあるポジティブな感情や、ふとした瞬間に生まれる心のきらめきを、動物やスイーツ、花といったモチーフを通して「可愛い」「きれい」と感じられる表現として描きたいです。
◆出会いの先に

卒業制作《はなことば》2026年 岩絵具/和紙、パネル 227.3×181.8cm
──この春には東京藝術大学の学部を卒業されましたが、大学で過ごした4年間を振り返っていかがでしたか?
苦しいこともありましたが、やりたいことをたくさんやり切れた4年間だったと思います。少し忙しくし過ぎたかもしれませんが、多分それは私の性質なのでこれからも駆け抜けます(笑)
そして何よりも同期にとても恵まれました。素敵な友人でありライバルに囲まれて過ごした4年間は宝物だと思っています。
──目標や挑戦したいことなど、今後の展望をお聞かせください。
この春から本格的に作家としての活動を始め、これまで学業に割いていた部分を制作やお仕事に使えるようになるので、まずは新しい生活に向き合いながら、着実にステップアップしていきたいです。
より多くの人に自分の絵を届けていきたいという思いもあり、いつか海外での展示にも挑戦してみたいです。目の前の目標を少しずつこなしていくイメージで無理しすぎず、周りを見ていきたいです。
──今後新たに描いてみたいモチーフや、取り組みたいテーマはありますか?
卒業制作展で制作した自画像が思った以上に楽しかったので、人物を描いてみたい気持ちがあります。これまでと同じように思い入れのあるモチーフも大切にしつつ、まずは身近な友人をモデルに挑戦してみたいです……!

《自画像》2026年
──最後に、ご来場になる皆様へメッセージをお願いします。
この度はお忙しい中、足を運んでいただき本当にありがとうございます。素敵な方々に囲まれて展示ができることを、とても嬉しく思っています。これからも全力で制作に向き合っていくので、見守っていただけたら幸いです。
穏やかな口調と笑顔で語った藤村。しかし、彼女の制作と向き合うストイックな姿勢が精力的な活動を支えていることは疑いようがない。そのやさしさの中にある強さが、これからも多くの人を魅了していくことだろう。
[Profile]

藤村 栞 Shiori Fujimura
2000年
東京都生まれ
2023年
藝大日本画1年15人展「はなことば」(Gallery TK2/東京)
Arts Students STARS(+ART GALLERY/東京)
藝大日本画学部2年有志(アートスペース羅針盤/東京)
KENZAN 2023(東京芸術劇場)
東京藝大アートフェス2023作品掲載、佳作受賞
アートのチカラ2024(伊勢丹新宿店/東京)
2024年
二人展「NEW JAPANESE PAINTING -不易流行-」(+ART GALLERY/東京)
個展「ひだまり」(Gallery TK2/東京)
2025年
Happy New Start 〜現代風月〜(日本橋N11ギャラリー/東京)
cafe project(FUDGE gallery & café他、巡回/東京)
完全 -KANZEN-(銀座三越/東京)※’24年出展
たんざく展(伊勢丹新宿店/東京)
ART ART ART 2025(松坂屋名古屋店/愛知)
ARTの挑戦 めでる・いろどる・たのしむかたち(池袋東武/東京)
2026年
東京藝術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業
FOOD -おいしいを創る-(REIJINSHA GALLERY/東京)
他、出展、受賞多数
現在、東京都にて制作
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