| 会場:東京国立近代美術館 | 会期:3/17(火)〜5/10(日) |

観山肖像写真 個人蔵
関東では13年ぶりとなる下村観山の大回顧展。
150件を超える傑作を公開!!
日本画家・下村観山(1873-1930)は紀伊徳川家に代々仕えた能楽師の家に生まれ、橋本雅邦に学んだのち、東京美術学校に第一期生として入学。卒業後は同校で教鞭を執るも、校長の岡倉天心とともに辞職し、日本美術院の設立に参加した。
出品作品点数約150件、関東では13年ぶりの開催となる今回の回顧展は、狩野派、やまと絵の筆法を習得して若くから頭角を現した観山が、1903(明治36)年からの2年にわたるイギリス留学を通して幅広い視野を身につけ、画壇を牽引する存在へと成長する軌跡を示すものだ。そこからは、盟友の横山大観、菱田春草らとともに明治という新時代にふさわしい絵画を切り拓こうとした観山のひたむきな姿が浮かび上がってくる。
さらに、日本の古画や中国絵画の研究の成果、本人のルーツでもある能を主題とした絵画制作、時の政財界人とのサロンのようなネットワークにもスポットを当て、様々な角度から観山芸術の魅力に迫る。明治から大正へと時代が移り変わる中で絵画のあり方に改めて向き合った観山。自己表現のための芸術とはまた別の、作品を手に取る個人ひいては社会とともに生きる絵画を追い求めていった彼の姿が、この展覧会で明らかになるだろう。

《木の間の秋》 1907(明治40)年 東京国立近代美術館蔵(通期展示)
展覧会の見どころ
1. 誰もが圧倒される“超絶筆技”を味わう
狩野派、大和絵、琳派、中国絵画そして西洋絵画まで、東西の伝統的な絵画表現を徹底的に学び、自由自在に筆を操った観山。今もなお、その繊細な筆技は他の追随を許さないほどだ。

《獅子図屏風》 1918(大正7)年 水野美術館蔵(後期展示①4/14-5/10)
2. 観山芸術の意義を再検証 -作品の意味を読み解き、成り立ちを探る―
よく見ると和洋折衷の不可思議な表現、ミステリアスなモチーフなど、観山の作品には気になる部分がたくさんあることが分かる。そこには技法の他に、その作品を描くことになった経緯(作品の成り立ち)も関係しているのだ。これらをひとつひとつ解きほぐすことで作品の示す意図を明らかにし、それを通じて観山芸術の意義を再検証する。

《竹の子》(絶筆) 1930(昭和5)年 個人蔵(通期展示)
3. 大英博物館蔵、英国留学時の観山作品が里帰り
新しい日本の絵画には色彩の研究が必要だと考え、日本画家初の文部省留学生としてイギリスへ留学した観山。現地で親交を深めた小説家で東洋美術研究家のアーサー・モリソンに贈った自作(大英博物館蔵)が里帰り!
作品からは、海外経験を通じ観山が考えた「日本画のあり方」をも感じられるはずだ。

《ディオゲネス》 1903-05(明治36-38)年頃 大英博物館蔵
©The Trustees of the British Museum(通期展示)
作品解剖(出展作より抜粋)
重要文化財《弱法師》に迫る
謡曲を題材に描いた、観山唯一の重要文化財《弱法師》。そこには観山芸術の真骨頂ともいえる「卓越した技術×深い教養×高いアレンジ力による“仕掛け”」が詰まっている。
例えば、交差した木の枝を表す線、人物の着衣の線にも金を使用するなど日本の伝統絵画由来の装飾的表現を用いながらも、西洋画風の陰影をつけた人物、梅の幹の描写を合わせることで画面に現実感を与えている。また、絵具のぼかしによる「落ちくぼんだまぶた」、細い墨線による「閉じられた目と長いまつ毛」「おくれ毛」などで、主人公(放浪する盲目の俊徳丸)の姿を表現した。

《弱法師》右隻 1915(大正4)年 重要文化財 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives(前期展示3/17-4/12)

《弱法師》左隻 1915(大正4)年 重要文化財 東京国立博物館蔵 Image: TNM Image Archives(前期展示3/17-4/12)
「東洋絵画×西洋絵画」の謎
三十三観音のひとつ、魚籃観音。中国絵画はもちろん日本の伝統的な絵画にも見られる画題だ。しかし観山は、観音や両脇の男性らに西洋画的な陰影表現を駆使した。特に発表当時賛否両論を巻き起こしたのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》を思わせる顔立ちの観音である。
観山はそれまでにも、東西の絵画技法や図像を広く自分のものとすることで、従来の日本絵画の革新をはかろうとしてきた。そんな彼がなぜ、留学から20年を経た当時、あえてモナ•リザと分かるような顔を描いたのだろうか。

《魚籃観音》 1928(昭和3)年 西中山 妙福寺蔵(通期展示)
社会のための絵画:渋沢栄一とともに
院展のような美術展覧会以外に、観山は社寺、宮家、実業家といったさまざまな相手のために作品を作った。一万円札で知られる渋沢栄一はその代表で、彼や高田早苗といった実業家、学者による「観山会」では、作品頒布だけでなく、作家・会員が集まり清談や古美術鑑賞旅行などもおこなわれた。白河市の南湖神社に伝わる《楓》は、観山会とは別に渋沢が観山に依頼したもの。渋沢は、社会事業への注力の過程で敬意を寄せた松平定信顕彰の一環として、定信を祀る南湖神社の創建にも奔走している。作品は橋本雅邦の次男永邦の《桜図》とともにこの神社に奉納され、実際に拝殿に掲げられて神社に「一段の光彩」を与えるものとして大いに歓迎された。

《楓》 1925(大正14)年 南湖神社蔵 画像提供:白河市歴史民俗資料館(前期展示3/17-4/12)
異国の地での奮闘ぶり
1903(明治36)年から2年におよぶイギリス留学、ヨーロッパ巡遊を伝える文字資料は、驚くほど残されていない。わずかに異国の地での観山の奮闘ぶりを生々しく伝えてくれるのが、師・橋本雅邦や母に対して送られた便りである。この手紙には、美術館で古今の名画に接することのできる喜びと同時に自分の未熟さを思い知らされる、と身の引き締まる思いで日々を送る様子が綴られた。添えられた絵には、下宿先でも熱心に制作する観山が描かれている。

下村観山「書簡・橋本雅邦宛」 1903(明治36)年10月23日付
個人蔵(前期展示3/17-4/12)
[information]
下村観山展
・会期 3月17日(火)~5月10日(日) ※会期中、一部の作品の展示替えを実施
前期展示:3月17日(火)~4月12日(日)
後期展示:①4月14日(火)~5月10日(日) ②4月14日(火)~4月26日(日) ③4月28日(火)~5月10日(日)
・会場 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
・住所 東京都千代田区北の丸公園3-1
・時間 10:00~17:00(金曜・土曜は10:00〜20:00)
※入館は閉館の30分前まで
・休館日 月曜日(ただし3月30日、5月4日は開館)
・観覧料 一般2,000円、大学生1,200円、高校生700円
※中学生以下は無料(入館の際に学生証等の年齢が分かるものの提示が必要)
※障害者手帳(ミライロID可)等をお持ちの方とその付添者1名は無料(障害者手帳等の提示が必要)
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展 「MOMATコレクション」(4-2F)も鑑賞可能
・TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
・URL https://art.nikkei.com/kanzan/
⚫︎この展覧会は5月30日(土)~7月20日(月・祝)の会期で和歌山県立近代美術館に巡回します